建設リサイクル法の「解体工事」と建設業法の「解体工事」の違いについて
解体工事業を営む場合に必要な許認可として、建設業許可(解体工事業)と解体工事業登録というものがあります。
この二つの許認可を混同されている方も多いと思います。
建設業許可は建設業法、解体工事業登録は建設リサイクル法とそれぞれ別々の法令により定められています。
それぞれの法律の主旨が異なるため、必要となるケースや考え方の概念に違いがあります。中でも「解体工事」の定義に差異があることに注意が必要です。
一方で、建設業許可を受けることによって、解体工事業登録が不要となるケースもあります。
今回は、そのあたりを整理していきます。
建設業法の解体工事業
建設業法の解体工事は、次のようなケースで解体工事にあたる場合と他の工事にあたる場合とがあります。
① 土木一式工事、建築一式工事で作った工作物を更地にする場合(ただし②の場合は除く)
⇒ 解体工事
➡ 建設業許可(解体工事業)が必要。
例:一戸建て住宅を解体して更地にする工事。
② 総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物や建築物を更地にする場合
⇒ それぞれ土木一式工事、建築一式工事
➡ 建設業許可(土木工事業)、建設業許可(建築工事業)が必要。
例:大きなビル(解体する際に総合的な企画、指導、調整が必要)を解体して更地にする工事
③ 各専門工事で作った工作物を撤去する場合
(専門工事とは、建設業29業種のうち土木一式工事と建築一式工事以外の工事のことをいいます。)
⇒ その各専門工事
➡ 建設業許可(各専門工事業)が必要。
例:内装のパーテーションを解体する工事(内装仕上工事で設置)
建設リサイクル法の解体工事業
建設リサイクル法の解体工事は、建築物(本体の床面積の減少するものを含む。)又は建築物以外の工作物を除去するために行う工事で、具体例は下表のとおりです。
工事の内容 | 種類 | 対象建設工事 | 登録 | 理由 |
---|---|---|---|---|
建築物の全部解体 | 解体 | 解体 | 必要 | 建築物の全部についてその機能を失わせるため届出も登録も必要 |
建築物の一部解体 | 解体 | 解体 | 必要 | 建築物の一部についてその機能を失わせるため届出も登録も必要 |
曳家 | 修繕 ・ 模様替等 | 替等修繕 ・ 模様替等 | 不要 | 構造耐力上主要な部分である基礎から上屋を分離するが、仮設によって支えられており、また、曳家をしている間でも建築物として機能しているため修繕・模様替等として扱う。 |
構造耐力上主要な壁の取り壊し | 解体 | 床面積が算定できない場合には対象外 | 不要 | 壁は構造耐力上主要な部分に当たるが、壁の床面積が算定できない場合にはこれをゼロとしてもよい。この場合には対象建設工事とならないため届出は不要。また、壁のみの取り壊しで建築物の除却を目的とするものでなければ、登録も不要 |
設備工事の附帯工事として壁にスリーブを抜く工事 | 解体 | 床面積が算定できない場合には対象外 | 不要 | 壁は構造耐力上主要な部分に当たるが、壁の床面積が算定できない場合にはこれをゼロとしてもよい。この場合には対象建設工事とならないため届出は不要。また、附帯工事として行われるものであれば、登録も不要 |
設備工事の附帯工事として床版にスリーブを抜く工事 | 解体 | 解体 | 不要 | 床版は構造耐力上主要な部分に当たるため、それにスリーブを抜く工事は解体工事となるが、附帯工事として行われるものであれば、登録も不要 |
屋根ふき材の交換 | 修繕 ・ 模様替等 | 修繕 ・ 模様替等 | 不要 | 屋根ふき材は構造耐力上主要な部分に該当しないため。 |
屋根ふき材の交換に当たり屋根版が腐っている等の理由により屋根版を交換しないと屋根ふき材の交換ができない場合 | 解体 + 新築 | 解体 + 新築 | 不要 | 屋根版は構造耐力上主要な部分に当たるため、その交換は解体工事+新築工事となる。ただし、屋根ふき材の交換の附帯工事として行われる場合は、登録は不要 |
屋根版の全部交換 | 解体 + 新築 | 解体 + 新築 | 必要 | 屋根版は構造耐力上主要な部分に当たるため、その交換は解体工事+新築工事となる。 |
(注)対象建設工事となるのは、特定建設資材を用いた建築物等に係る解体工事又はその施工に特定建設資材を使用する新築工事等であって、その規模が建設工事の規模に関する基準以上のもの(『建設リサイクル法の解説』より)
東京都解体工事業登録手引きより出典
解体工事業登録は500万円未満でも必要
上記のようにそれぞれの法令により解体工事の考え方等が異なり、必要な許認可のケースも異なっています。
建設業許可(解体工事業)は比較的、限定的で、解体工事業登録は広め、といったところでしょうか。
例えば、建設業許可の専門工事は500万円未満の工事(軽微な工事)であれば建設業許可は不要となっております。
しかし、解体工事業登録では、金額の制限はありませんので、上記のような登録が必要なケースに該当する場合は金額に関係なく解体工事業登録が必要となるわけです。
建設業許可の解体工事業と解体工事業登録を混同して、
「工事案件が500万円未満だから、何も許認可をうけなくても大丈夫!」
と思っていませんか?
それぞれの法令で許認可が定められている以上、内容を確認し、それぞれの法令に該当するケースの解体工事業を営む場合は、必要な許認可を取得する必要があります。
建設業許可を取得していれば、解体工事業登録が不要な場合がある
解体工事を請け負う営業(その請け負った解体工事を他の者に請け負わせて営むものを含む。)をしようとする者は、元請・下請の別にかかわらず、その業を行おうとする区域を管轄する知事の解体工事業登録を受けなければなりません。
建設業許可と異なり、営業所を置いていなくとも、その工事を行う都道府県で、知事の登録が必要となります。
ただし、土木一式・建築一式・解体工事業のいずれかの建設業許可を受けた者は除かれ、解体工事業登録が不要で業を営むことが出来ます。
建設業許可は工事を行う都道府県知事ではなく、営業所のある都道府県知事または国土交通大臣の許可を受ければ良いので、仮に東京都の営業所で土木一式・建築一式・解体工事業のいずれかの建設業許可があれば、その東京都の営業所は各都道府県知事の解体工事業登録をすることなく、全国どこでも解体工事業を営めるということです。